感覚を拡げる日本酒1
感情が大事というお話をしていますが、感覚も感情と深い結び付きがあります。
味覚を研ぎ澄ますことは、感情や感覚を開く切っ掛けになります。
一悟術のメルマガのコラムで執筆した内容を一部、変えて掲載します。
目 次
私が日本酒を好きになった切っ掛け
私は29歳から13年間病に掛かり、その間ずっと食事や水分の制限がありました。
専門的には、塩分、水分、カリウム、リン、タンパク質などの制限。具体的にはパーティ料理のほとんどが、引っかかりました。お酒、オードブル、お寿司、果物などは、ほとんど食べられなくなりました。
見た目で病は分からないため、初対面の人には告白できず、会食はできなくなりました。
食べることが楽しみではなく、苦痛に変わったのです。
病になった当時は、将来の目標を見失い、現実を受け入れられない喪失感もありました。私は無意識のうちに、感情を感じない、なにも味わない状態になり、慣れていきました。
ダイエットには、似た部分があるでしょう。食べたいけれど、食べてはいけない。人は禁止されると、どうしても食べたくなって過食したり、逆に禁止が過ぎて拒食にもなります。
リバウンドするのは、辛さを感じない様に無理したからでしょう。意識と無意識がぶつかり、バランスを崩すのです。
時が経ち、奇跡的に病が治った時は自然と、閉ざした心を開くことを欲したのだと思います。
飲食の楽しみをあきらめた私が、何を食べても飲んでも構わないとなった時に、恐る恐るでしたが、あきらめたことを、やりたいと思いました。
「食事を楽しもう」「よく味わおう」それだけのことです。
当初は、お酒を飲むことに罪悪感がありました。また体を悪くしたらという不安からです。
もう大丈夫と思えた時、目に入ったのがカルチャーセンターの日本酒講座でした。
勉強しながらお酒を飲むことが、自制的になれるとピッタリきました。参加されている方は、お酒好きな方ばかり。その後は、そんな方とも飲みに行くことも。それが日本酒を好きになる切っ掛けになりました。
気が付かないうちに、周りの景色は見なくなった。外では音楽を聞いて、周りの音は聞いていなかった。
私の様な人は居るかもしれません。感情や感覚を閉ざした人は、無理はしない方がいいと思いますが、食事や飲物の楽しみから入るなら、感覚や感情を開く切っ掛けになるはずです。
「はじめに、味わおうと意識するだけ」。オンオフできると、なおいいですが。
認識で変わる味覚
お酒を飲む時、食事の時、味を確かめますか? 意識してしっかり味をみることです。
日々のこと、私は長い間、なんとなく飲食していました。喉が渇いた、お腹が空いた、時間だから、そんな感じに無意識でした。料理や食品に関心がある人は、味はもちろんですが、成分まで意識するでしょう。
私が日本酒講座で学んだことは、意識して、集中して味わうことです。
日本酒には「利き酒」(ききざけ)と言って、味をみる文化があります。小さな器、お猪口の「蛇の目模様」はご存じの方はいるでしょう。白い底に青い二十円が入っています。利き酒するために、あの色、形で作られています。
講座を通して私は、意識的に味わうことが増えました。お酒の世界を旅するような気持ちになったからでしょう。スイッチが入ってからは、感じる世界は拡がりました。
お酒の色、味、香りを確かめながら、それを言葉で表現します。細やかに表現することで、さらに感覚は磨かれます。
例えば「澄明度があり、メロンを思わせる香り、旨味がしっかりして、ほどよい酸味もある」これが一つのお酒の表現ということもあります。貴方が飲んだ時には、挑戦してほしいと思います。
ワインで言うソムリエ、日本酒に精通したガイドの資格として「利き酒師」があります。利き酒に力を入れる人は、お酒を口に含んで味を確かめた後、飲まずに吐き出します。次のお酒を利き酒する前には、水で口を清めることも、感覚を鋭敏に保つためです。
私の場合は、美味しいお酒は吐き出したことはありません。笑 続けて飲んでしまえば、味が分かるのは2杯目まででしょう。「お酒は飲んでも飲まれるな」と言います。悪酔いしてまで飲んでしまう場合は、一悟術のセッションがお勧めかもしれません。
さて「日本酒」は総称です。造っている会社を蔵元と呼び、全国に約1400の蔵、1万を超える銘柄のお酒があります。地元の酒「地酒」として聞いているかもしれません。静岡には27の蔵、首都圏にも蔵はあります。数えきれない種類と、いろいろな味わい方がある。種類の多さに圧倒されて、どれを選んだらよいか悩みになるほどです。
居酒屋では、お酒のメニューに蔵元やブランドの名を載せているお店は信用できます。日本酒をひとくくりに出来ないことを知っているからです。
美味しさの不思議
全国に約1万の日本酒がある。私の「一番美味しいお酒はどれなの?」と疑問が湧きました。探すための気付きを得たことがあります。
日本酒には「利き酒」と言って、味を見る文化がある。注意深く味を見ることが大切と書きました。味覚を研ぎ澄ますうちに「美味しい=(イコール) 味ではないらしい」と分かってきました。
利き酒の際に、近くの参加者が言いました。「今日はお酒が冷えているから、味がわからない」。そうです、美味しく感じるのに、味の差は分かりにくかったのです。
美味しさってなに? 人によっても差があると疑問に思いました。
私は、美味しさは「快」ではないか? と推理しました。味覚は感覚の一つ。味覚を入口に感じられる、想起される快。ビールはよく「のどごし」と言います。喉の感覚も美味しさに大切かもしれません。
ランクの高いお酒ほど美味しいか?
日本酒は製法の違いでランク分けをしています。原料のお米を磨くことで、香り高く、すっきりした味わいを表現します。材料、作り方が吟味され、精魂込めて作られています。ランクの高いお酒は、いい状態のお酒であることが多いでしょう。
私はB級好き、価格が安いのに美味しいお酒を出している蔵元を信頼しています。実験をしたことがあります。一つの蔵(製造元)でも、何種類ものお酒を製造しています。 その中で一番ランクの高いお酒 (純米大吟醸)を一口飲んだ後で、同じ蔵の一番ランクの低いお酒 (普通酒)を飲むことを試しました。
その順番で飲むと、ほとんどの場合、低いランクのお酒を吐き出してしまいます。醸造アルコールの影響でしょう。
普通酒を出している十程度の蔵を試しました。静岡の蔵で低ランクのお酒を飲めたのは、喜久酔という蔵だけでした。
この蔵はお米を炊く際に、全て手洗いで行っています。機械が当たり前の時代、精魂込めて作っているから、作り手の意識の高さを感じるのかもしれません。
日本酒は発酵食品、基本1年ものになります。管理の行き届いたお酒と、放置されたお酒では味も変わります。冷蔵設備がしっかりした店でないと、お酒を卸さない蔵もある。保存状態によっては、お酒は劣化します。
日本酒は基本、冷蔵庫で保管するもの。特に「生」「生生」と書かれたものは、発酵が続いています。造り手、売り手、飲み手にも愛情がないと、味に影響するのです。